good luck have fun.

140文字に収まらないことや、140文字に収まることを書きます

映画を観てきた

※某ピエロの映画のネタバレを存分に含む。████は検索避け

 

実に面白かった。実に興味深かった。美しかった。

 

仕事を除けば家から出るのは半年ぶりだか一年ぶりだかになるが、その甲斐は十分にあった。久しぶりのシャバの空気はうめぇ。

 

冒頭の感想一文は彼の行動そのものを肯定するわけではない(する部分もあるが)。特に彼の偏執的なエネルギーの生成源になっているように見える「個人を個人として扱わない社会」については引き気味で見ざるを得なかった。

 

Cons:

  • というのも、「(はともかく我々は)いうほど個人として扱われてないか?」と思うし、「そもそもいうほど個人として見てほしいか?」というのが私のスタンスのため、どうにも共感しづらい所だ。強者の都合を声なき弱者に一方的に押し付けるんじゃあないというのは理解はできるが、しかし、できるだけ社会の隅で目立たずひっそりと暮らしていたいという吉良吉影系男子も多いのではないだろうか。もっとも、それすら許されなかったのがアーサーではあるが、物語展開の都合からくるゴリ押しの不幸を感じる部分も少なくはなかったのも事実である。看板泥棒や地下鉄のイザコザなんてのをヌルリと差し込めるのは一流映画スタッフの力が為せる技なのだろう。(そもそも本作が上手くてかつ都合が良いのは、どこまで非合理な展開でも「アーサーはそう思ったから」がまかり通ってしまう所だ) 

Pros:

  • その一方で「いつでも陽気に笑っている奴が一番強い」というメッセージ(そんなのあったか?)には思わず舌鼓を打ってしまうし柏手も連発である。見たいものだけを見て、やりたいようにやる。これは全く正しい。実際、昨今のテクノロジーの発達は凄まじい。今の世の中、その気にさえなればやりたいことはほとんど何でもできるのではなかろーか。ネットとハサミは使いようってやつである。
  • SHOWの演説はあまりにもわかりやすいが、思わず手に力が入るし目頭も熱くなる。ありふれた安っぽいセリフのはずなのに演出が上手い。
  • 全く関係ないが、映画初心者かって感想になるが、せまっ苦しい場面から一転して空撮のビルの映像が視界に飛び込んでくるパターンは劇場で見ると大変気持ちがいい。あれは良いものだ。
  • 警察の追跡を撒いて列車から降りた後のシーン。脱ぎ捨てた仮面の下から現れるピエロのメイクこそが本作の核心ではないのかと思う。誰もがなりうるわけでもなく、社会が生んだわけでもない。彼は最初から本質的にピエロであったのだ。弱者に寄り添う社会派映画に見せかけておきながらここで一転、観客を突き放す。お前らごときがになれるとでも思ったか、馬鹿め。という感じで受け取っておこう。
  • 不完全なスタンドアローンコンプレックス(アノニマスとやらは今でも活動してるのかね?)。誰もが彼に注目するが誰も彼個人には興味を持たない暴徒の群れにアーサーは何を思ったか。
  • 元より狂人の狂言にそこまで熱を入れる方がどうかしてるわけだが、徹頭徹尾ピエロとして踊り続けたは最高のコメディアンである。