good luck have fun.

140文字に収まらないことや、140文字に収まることを書きます

私は両の足で立っている、と思われる。思われるというのは、ここはまったくの暗闇であり、私は自身の姿すらも見えない。あくまで、背筋と足腰が一本線に伸び、足裏になんらか地面のような感触を抱いている、というひどく曖昧な根拠から「立っている」と想像している。両手を前に後ろに左右に伸ばしてみても、天井や壁に触れることもなく、いたって自由自在である。何にも遮られることなく、何にも縛られることはなく、ここには可能性の全てがあるが、しかし暗闇であった。

 

さて、どうするか、と私は思う。

 

まぁいいか、と考えたようだ。

 

地面らしきものの感触を信じて、私は陸上選手のようにクラウチングスタートの姿勢を取り、浅く深呼吸する。何も考えず、何も想像せず、何にも躊躇しない瞬間を待って、私はあらん限りの力で前方に身を投げ出し、全力で疾走を始めた。もしも浅い凹みや深い谷間があったとすれば、あるいは薄い厚い壁があるとすれば、大怪我をするか首の骨をへし折るか、とにかく酷い目に合うに違いない。やれるものならやってみろよ、と思いながら。私は走る。キチガイのように笑いながら。