■

誰かが言っていた。

A：後悔しない選択はない

ここに星と月があり、例えば星を選んだとする。その結果がどれほど幸福であろうと、月を選べばより良い結果が待っていたのではないのかと、人はそんな思いが心をかすめずにはいられない。

Aを言い換える。

A'：選択とは後悔することである

数多くの名言（）が「重要な選択を人任せにするな」と繰り返し伝えるのは、つまりそういうことだろう。選択はどうあっても後悔を伴うのだから、その因果の引き金を他人に委ねるのはあまりに不誠実であり、無責任であり、機会の損失ではないのか。多分、そういうことだ。ということは、今あなたが自分自身に悔いているとするならば、それは何かを選び、何かを選ばなかったからに違いない。あなたが意思を持って行動した、あるいは行動しなかったからこそ、今の後悔が在るのだ。素晴らしいじゃあないか。

さらに誰かが言っていた。

B：人生とは選択である

説明は要さない。そのままだ。そしてA'とBから以下が導出される。

C：人生とは後悔することである

あなたが後悔しているのは、あなたが生きて人生を送っているからだ。だから気に病むことはない。かけがえのない後悔を思う存分に味わい尽くすがいい。

という前提を置いた時、一つの問題が生じる。あなたはこれまでの人生に一切の後悔もなくジャンピングダブルピースで全肯定なのだ。およそ意識可能な選択の全てで「ベター」なものを掴み取ってきたという自負があり、完全無欠でパーフェクトなのである。とすると、まずい。Cの対偶が成立しない。何かを間違えているのか、それとも何も間違えていないのか。