good luck have fun.

140文字に収まらないことや、140文字に収まることを書きます

メモ「Learn Better」

いわゆるハウ・トゥ・ラーン本。

 

Learn Better――頭の使い方が変わり、学びが深まる6つのステップ

Learn Better――頭の使い方が変わり、学びが深まる6つのステップ

 

私は情報エンターテインメントには定量的な説明はあんまり求めてなくて、そういう裏取り検証はプロに任せればいいと思っている。色々と数字やグラフを載せたところで、そんなものは結論ありきでいくらでも誘導可能だからだ。私には騙される自信しかない。

 

この本はすごくよかった。本文中にはほとんど定性的な表現しかない。いや、正答率が何パーセントあがったとかそういうのはあるのだけど、n がない。社会実験の結果(多数のサンプル)も著者一人の体験(1つのサンプル)も同じインデントの深さで書かれている。それでいて適当さを特に感じないのは著者の真摯さから来るものなんだろう。というか、本書の学習効果をあげるために意図的にそうしていると思われる。

 

情報本を読むときの私の基本戦略は、とりあえず気に入った内容を仮説として頭の片隅に置いておいて、その後の経験に応じて確からしさを上げたり下げたりしていくというものだ。これは体感的には悪くないような気がしている。以上、御託。

 


適当に印象に残った所を。

 

まず、著者はジャクソン・ポロックが好きすぎではないのか。Kindleで買ったのでいま試しに「ポロック」で本文を検索してみると67件ヒットした。やはりジャクソン・ポロックが好きすぎではないのか。

 

大変有名な画家らしいのだけど、私はこの本を読むまで名前を知らなかった。絵はたぶん誰でも一度は見たことがあると思う。子どもがペンキや絵の具をまき散らかしたような作品を作ってきた偉大なアーティストさんである。

 

あのカオスな作品が、意外にも(と言っていいのかわからないけども)非常に長い修練に基づいた技術の結晶であるというくだりで登場するわけだが、複数章にわたって例として再登場してくるのでどうあっても記憶に残る。著者が書いている学習メソッドをいかんなく駆使して読者の心にポロックを植え付けてくる。本書を書いた実際の目的はそれではないのかと割と本気で思ってしまう。そして私はお安いレプリカだったら1枚くらい欲しくなってしまっている。効果てきめんである。

 


次。思考と五感。

 

今度、幾何学の問題に出くわしたら―建築図面でもいい―問題の要点について理解を深める方法として、図を指でなぞるといい。研究者によると、手の動きによって図が理解しやすくなり、学習が促進されるという。

 

なるほど、やったことはないが、いかにも効果がありえそうに思える。

 

そしてここで結びついたのが、ここ最近はKindleで本を買うことが多いのだけど、どうにも読んでいて上滑りしている感覚が拭えなかった点である。生まれた時からタブレットというデジタルネイティブ世代は問題ないのだろうけども、私にとっての読書というのは、重さがあって、指でページをめくって、紙の匂いがするもの、という構造が脳に作られてしまっているのではないか。だから電子書籍だと脳の読書回路が100%働かなくて、いまいち没入感が薄いという説。さらに、

 

携帯電話は「あるだけで」集中力を減退させることがわかっている。つまりテーブルに置いたiPhoneが視界に入っているだけで、タスクへの集中力が低下する。

 

まぁ、だからといって電子書籍を買うことをやめるわけではないのだけども。

 


最後。学ぶとはミスをすること。

 

結局、ミスは必ず起こるものと観念すべきなのだ。か・な・ら・ず。学習中であろうとなかろうと、人がいずれへまをすることに変わりはない。
(略)
間違いは思考の本質である。間違いは概念形成の核心だ。学び、専門知識を育てる際に間違いをおかすのは、それが理解するために必要だからだ。

 

これじゃないのか?

 

常日頃ふに落ちてなかったのだけど、一般的には大人よりも子供の方が学習が早いと言われている。多分データを取ってもそうなのだろう。でもそれが、単に脳の状態や加齢に伴うものから来ると言われると、ちょっと納得しがたい所があった。

 

で、要するに、年を取るほどにミスの許容度が下がるという要因が割と無視できないほどに大きいのではないのか説。それは周囲からだけではなく、自分自身に対しても。

 

まぁ、だからといってミス(学習)を恐れずに何かができるかというとそうでもないのだけども。


そんなメモ。

 

アリストテレスはかつて「学習は楽しみではなく、苦痛をともなうものだ」と述べた。