ここ最近はもっぱらギターで遊んでいる。
冬はコタツでミカンを食いつつテレビでも流し、ギターを弾きながら雪解けを待つ。これが日本人の正しい在り方だ。古くは万葉集にも載っている。嘘じゃない。本当だ。
しかしその結果、言いたいことが何もなくなった。
虚無である。
ごりごりにオーバードライブをかけてディストーションノイズに塗れたセックス・ピストルズはほとんど射精と区別がつかない。
全てがどうでもよくなる。
思うに、全人類にエレキギターを持たせれば世の中の争いごとの200%はなくなり、そして人類は死滅する。争いごとは諸々諸事情があるにせよ結局のところ「なんかあいつムカつく」という感情がじぇねれいたあとなっているが故、諸悪の根源たる「ムカつく」を霧散させてしまうエレキギターはどんな危険ドラッグよりも危険かつピースフルなのだ。別に平和主義になるわけではないが、人の怒りの総量なんてたかが知れている。Fury をリソースとして戦うバーバリアンですら怒り続けることはできないのに、それをただの人間が行えるものか。迫りくる悪鬼の群れを前に、エインシェントハンマーを頭に、臓器に、四肢に、振り下ろし叩き潰し切り落としぐちゃぐちゃの肉塊と化したモブの残骸の中でバーサクが解け人に戻るあの瞬間のなんとも言えない虚しさは何なのだろうか。私はぶち殺す快感よりもむしろ終わった後の虚無に憑りつかれてハックアンドスラッシュを行っているのかもしれない。
そんな最高なエレキギターであるが、最初の一曲目は慎重に選びたい。多くの初心者はここで間違える。そして楽曲を演奏するための仕様もない基礎トレーニングの果てに飽きて辞めていってしまう。非常にもったいない。だから今これを読んでいるお前にだけ教えてやる。ネタだか狂人だかよくわからない文体で書いてはいるが、内容自体は割と真顔で信じている。いいか、よく聞け。最初の一曲目はセックス・ピストルズの Anarchy in the UK だ。これ以外にはあり得ない。
なぜか。
彼らがイコールパンクであるからだ。
そこに足を踏み入れたからには上手い演奏なんてもってのほかで、むしろ演奏技術の上達が表現の妨げにすらなりうる唯一のジャンルがパンクである。すなわち、
- ルール其の一:正しく演奏してはならない
- ルール其の二:きれいに演奏してはならない
- ルール其の三:チューニングなんてどうでもいい
- ルール其の四:むしろ2~3度くらいずれてる方がいい
- ルール其の五:どんなに安いギターでも問題ない
- ルール其の六:なんならギターがなくても問題ない
- ルール其の七:パワーコードだけで弾ける(間奏のどうでもいいリフは飛ばしていい)
- ルール其の八:もちろんオルタネイト不要。ダウンピッキングするだけでいい
- ルール其の九:もちろん脱力も不要。腕がもげるまで弦をかき鳴らせばいい
- ルール其の十:ルールに従うな
つまり、楽譜なんてクソということだ。大変失礼ながらセックス・ピストルズさんすらクソと言えるだろう。パンクは体制に迎合しない。社会性が皆無の生き物だからだ。パンクは誰にも従わない。誰ともコミュニケーションが取れないからだ。だから、お前が「こうだ」と思ったクソみたいなノイズだけが正解で、妥協して生み出したハーモニーはただのファッションパンクだ。
理解したか?
解ったなら今すぐYouTubeに違法アップロードされている音源を聴きに行け。そこからがスタートだ。