good luck have fun.

140文字に収まらないことや、140文字に収まることを書きます

イン・ザ・居酒屋

 知ってっか? 昔、アーバンチャンピオンってゲームがあったんだよ。任天堂のファミリーコンピューターってゲーム機のさ、いわゆるファミコンだよ、ファミコン。え、お前ファミコンを知らないのかよ。そうか、そうだよな。なるほどなぁ、まぁ、それはいいんだよ。そのファミコンで発売されたゲームの中でも、本当に最初期に出たゲームなんだ。内容はシンプルなもんでさ、男と男が1対1で街中で殴り合うわけ、相手がぶっ倒れるまでよ。たしかできることも本当に限られてて、パンチとスウェー、あと前後への移動とか、それくらいしかできなかったよ。俺はあれが対戦型格闘ゲームの原型なんじゃないかって思ってるんだけどな。え、なぜ殴り合うのかって? 馬鹿かお前は、そんなことも説明しなけりゃいけねーのかよ、男と男が街中でバッタリ出会ったら、そりゃ戦うしかねーだろがよ、それ以外に何かあんのか? ねーだろーが。そんなこと一々説明させないでくれよ、お前はそういう所があれなんだよ、ったくよぉ。話を戻すけどさ、そんな美学の塊みたいな野郎二人も、ファイトを止めなきゃいけねー瞬間があるわけ。わかるか。わかるわけねーよな。ほんとクソだぜ。答えはポリ公がやってきた時だよ。サイレン鳴らしてよ、パトカーにのってお巡りがやってくるわけ。そん時に戦ってるとよ、ポリ公に取っ捕まって、ゲームオーバーよ。信じらんねーだろ。男同士がプライドをかけて戦ってるっつーのに、ただの部外者がそれに割り込むんだぜ、正気かよ。まぁゲームだからさ、そういうシステムなんだろうけど、俺は許せなかったね。だからよ、俺は止めなかった、サイレンが聴こえてきても俺は相手を殴り続けたね。そりゃ引かねぇよ、引けねーだろ。ポリ公を気にしてお行儀よくファイトして、それで相手を殴り倒したところで、いったいそりゃ何の勝利なんだよっつー話だよ。もちろんさ、そんなのシステムは許さねぇから、俺はお巡りに取っ捕まっちまうんだけど、だから多分、俺はステージ1とか2くらいまでしか進めなかったよ。昔のゲームってのはだいたい全部でステージ5くらいまでしかなくて、最終ステージをクリアするとまた最初に戻って延々とループするのが相場だったんだよな。だから終わりなんて実際はないんだけど、本当の意味でステージ1とか2、うん、それくらいしか進めなかったよ。でもなぁ、ありゃ許せなかったよ、俺は戦いたいのにさ、なんで邪魔すんのかね、っとによぉ。なぁ、わかるだろ。あ? なんだよ? ググってみたら、そんなシステムじゃない? そんなの知ったことかよ、俺はあれで戦いの美学を知ったっつー話をしてんだろーがよ、事実がどうだとか、そんなくだらねーことで水を差してんじゃねーよ、なぁ頼むぜ、おい。全然関係ないけどさ、いや関係あるか、ファイト・クラブっつー映画あんだろ。原作の小説もすげぇんだけどさ、まぁ映画の方が有名だよな、ブラッド・ピットがかっけーんだよ。いや、もちろんエドワード・ノートンもイケてるぜ? でもなぁ、やっぱこう、ブラッド・ピットが強烈すぎるよな、悔しいけど、これは仕方ねーよ。たしか東村アキコがなんかの漫画で「男は隙あらばダーク・ナイトの話をしようと狙ってるから気を付けろ」ってセリフを吐いてたけどさ、ありゃちょっと違うよな。あくまで女向けの一面にすぎねーよな。男同士の場なら、むしろ隙あらばファイト・クラブの話をいつぶち込もうかと、お互い虎視眈々と狙ってんだよな。そう、そうなんだよな。ぶはは、笑っちまうよな。やっぱさぁ、戦ってる奴ってのはカッケーよな。なんだっけ、「ファイトが終わった時、何一つ解決してはいなかったが、何一つ気にならなくなっていた」だっけ? 痺れるよなぁ、すげぇよなぁ、あぁありたいもんだぜ、まったくよぉ。ん? あぁ、もうこんな時間か。じゃあ、そろそろ行くか。……つまり俺が言いたかったのはさ、お前は間違っちゃいなかったと思うぜ、ってことだよ。むしろ、すげぇ嬉しかったぜ、ほんとによ。ルールやシステムに飼いならされちゃ、おしまいだよ。俺たちが作んだよ。スクラップアンドビルドってやつよ。誰かが壊さなきゃならねぇ、誰かが作らなきゃならねぇ。だからなぁ、お前がちゃんと壊せる奴で、俺は本当に嬉しいよ。何も壊せねー奴に何かが作れるわけねーんだよ、だろ?