good luck have fun.

140文字に収まらないことや、140文字に収まることを書きます

コンビニの陳列棚に並ぶサラダチキンが目に見えるようになった

ここ数年、これはおもしれぇ、と思った漫画はたいてい見つけた時には既に打ち切られていることが多く、『ご飯は私を裏切らない』もその一つであった。

 

しかし本作が本当に打ち切られたのかどうかはいまいち判然としない。作者の情報を検索すると個人ウェッブサイトが見つかり、そこからニコニコ静画に掲載する趣味の作品群がリンクされているが、どうやら一本の連載作品を作るのに非常に苦労していた様子がわかる。なので作者として「出し切った」だけなのかもしれないし、読者としても本作の二巻を読みたいかと問われれば、そりゃもちろん読みたいに決まっているが、別に読みたくない、少なくとも大いに満足した、とも言える。

 

何かの作品に言及する際に別の何かと比較する手法に違和感はあるものの、他に適切な手法を知らないため私はこれまでも頻繁に行ってきたし、だから今回もそうする。

 

カテゴリー的には施川ユウキの『鬱ごはん』と似たようなところに位置するだろう。

 

  • いまいち社会に溶け込めない主人公
  • 新しい何かに取り組むにはやや遅いと思われる年齢(と本人は思っていたり、そうでもなかったりする。遅いわけがないのだが)
  • 内省的で心情の描写が多く、人との会話シーンが極めて少ない
  • このままでいいと楽観しているわけでもないが、悲観しすぎているわけでもなく、現状を受け入れている
  • 食が物語の中心
  • 食に対する問いが哲学的な考察に発展する
  • より端的に言うと、死から目を背けない物語

 

似てる。すごく似てる。

 

しかし、この2つの作品を決定的に分けるポイントがある。

 

食の描写だ。

 

本作の食事シーンはめちゃくちゃ美味そうで、そして幸福に満ちている。

 

鬱ごはんを読んで何かを食べたくなったことは一度もないが、本作の主人公がサラダチキンを食べているのを見て、私も人生で初めてサラダチキンを買ってしまった。これまでも存在は知っていたが、主にトレイニーがカロリー調整などに摂取するものという程度の意識しかなく、私の視界には映らない、見える人にしか見えないユニコーンのようなものにすぎなかった。

 

これめちゃくちゃ美味いわ。

 

惜しむらくは低カロリーな点で、できれば一本500kcalくらいほしかった。そうであれば、これを1日3~4本もむしゃむしゃすれば生きて行けたのに。(栄養バランス?そんなもん知らん)

 

そういえばずっと「本作の主人公」と言っているが、考えてみると、主人公の名前が分からない。作中で自分で名乗ったこともなければ派遣先の人から名前で呼ばれたこともない、と思う。名前なんてなくてもこれだけ立派なキャラクターが成立するのだ。

 

本作を最初に読んだのは半年くらい前で、その時は「あまりにも自分が好きそうすぎる作品」であるため、評価半分くらいで寝かせておいた。そして先日、もうそろそろ客観的に読めるだろうと思い、改めて書籍で購入しなおして読んでみたところ、初読の時よりさらに楽しく読めてしまった。もうこれは本物だろう。

 

また新しい作品を読んでみたいが、残念ながらニコニコ静画の更新も今は止まってしまっている。

 

寂しいなぁ。